05/12/06更新

年収の最低ラインは自分で持たないとダメ

ただ、年収交渉については、「最低限この金額だけは譲れない」というラインを、あらかじめ自分で持っておくべきだね。転職にもいくつかケースがあって、年収が下がっても好きな仕事だから転職する場合もある。それは年収が下がるけどそれを上回るだけの「何かを得られる」とか、一旦年収が下がっても、「好きな仕事をやりながら年収を上げていく」という理由や目論見があるからだよね。

だから、転職した“瞬間”だけの年収にこだわっても仕方がない。じゃあ何をしなければいけないかというと、やっぱり何を「短期」「中期」「長期」で獲得していくかということ。これを考えなくてはならないと思う。

「短期で見れば確かにお金を失うけれども、中・長期でそれを上回るだけのものを手に入れることができる」と思ったら、目先のお金にはこだわる必要はない。逆に「中・長期で年収がアップするからといっても、短期で見ると年収が低すぎて困る」というシチュエーションもある。どこを自分は重視するのかを、転職活動中にハッキリ決めておかないと、結果的に転職が失敗してしまうこともあり得るのです。

だから、年収がいくらほしいのか決める前に、「この金額だけは確保したい、これだけは譲れない」というラインを決めるのが先ですね。そこで話が決裂するとしたら、それは転職しちゃいけないということだよ。話が決裂するのを避けるために、このラインについて説明することを先延ばしにするなんてあり得ない。絶対に避けて通れない問題であると認識しておくべきだと思う。

効果的な希望額提示術を伝授しよう

まあ、面談時にいきなり年収の話を切り出すのも奇妙な話だから、効果的な話の持って行き方を説明しましょう。まず「お金は高ければ高いほどうれしいですよ」と言ってニコッと笑い、「でも基本的には御社の方針に従いますよ」とへりくだって相手の共感を呼んでおいて、最後に「でも、住宅ローンの返済問題もあるので、この金額だけは何とか確保したいのですが……」とさりげなく本音を言う。

生活がかかっていると言えば、年収とか現金の話ばかりじゃなくて、意外とそれに付随する話も出てくる。例えば住宅ローン。前の会社のメインバンクから融資を受けていたりすると、転職に当たって、一括返済を要求されることもある。その分の金額について、転職する会社が肩代わりしてくれるのか、会社の提携ローンを紹介してくれるのか……なども確認しておいたほうがいい。

または、「今社宅にいて、同じ月収だと住む部屋がなくなってしまうので、同等のところを借り上げてくださると助かります」とかね。そうしたら、「弊社にも社宅がありますよ」と言うかもしれないし、「借上社宅で、このくらいの家賃のところで決めてください」と言ってくるかもしれない。目に見える年収だけでなく、それに付随する部分にも目を配る姿勢が大切だよ。転職には金銭面でのリスクが付いて回るだけに、こういう交渉は当然考えておくべきだと思うね。

「君はニューヨークヤンキースの松井秀喜じゃない」。この言葉が一般的な転職における給与交渉のキーとなるのは間違いない。よほどの有名人でもない限り、履歴書や職務経歴書、面接では、実務において未知のスペックが多いからだ。よって、あまり年収に貪欲になるよりも「ここならキャリアアップできる!」と思った企業で実力を発揮していくことを考えたほうがいい。お金はその後についてくるものだ。

アップダウンサイジング・ジャパン
代表 梅森浩一

日系企業と外資系企業2社を経て、35歳でケミカルバンク東京支店の人事部長に就任。以後、2社の外資系金融機関の人事部長を歴任。現在は「アップダウンサイジング・ジャパン」(URL:www.updownsizing.com) を主宰し、企業コンサルティング、講演活動などを行う。著書多数。最新刊に、『はぐらかしの技術』(日本経済新聞社)と『「採用したい!」と言わせる技術』(大和書房)がある

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