05/08/25更新

2人のMBAホルダーが、仕事や私生活で出会う悩みを解消し、明日の仕事に取り組む勇気を与えてくれる本を紹介する。いずれも「読書好き」ならではのセンスが光るレビューだ。これらの書籍から、疲れた心に潤いを与えるフレーズを見つけてほしい。激務で崩れがちな「ワーク&ライフ・バランス」を見直すキッカケになることだろう。

(取材・文 / 中村京介)

日ごろ激務に追われるエンジニアやビジネスマンは、つい私生活をおざなりにしがちだ。仕事から疲れて帰ってきて、家ではビールを飲んで寝るだけという毎日を送っている人も多いのではないだろうか。

しかし、本当に価値の高い仕事をしようと思ったら、私生活も充実させる必要がある。人生では、遊びも恋愛も趣味も仕事と同じように大事であり、これらを通じて蓄えたエネルギーが大きい人ほど、仕事へのモチベーションも高いということは、心理学的にも証明されている。

今回読書好きの2人のMBAホルダーが選んだ本は、仕事に直接役に立つものだけでなく、私生活の過ごし方の参考になるものも含まれている。仕事や私生活で出会う悩みを解消し、かつ明日の仕事に前向きに取り組むために、ぜひオススメの本を手にとってほしい。これらの中から、1つでも2つでも、仕事に疲れた心に潤いを与えるフレーズを見つけてもらえればと思う。

「伝説の投資家」の洞察力は冒険旅行で培われた!?

冒険投資家
ジム・ロジャーズの
世界大発見

日本経済新聞社
ジム・ロジャーズ(著)
林 康史、 望月 衛

若くして一生分の財を築き、残りの人生は好きなことをしながら自由気ままに暮らす――ビジネスマンなら誰もが一度は抱く夢に違いない。世界的に著名な投資家、ジム・ロジャーズは、まさにこの夢を現実にした人物である。1980年、37歳の若さで「一生世界中を冒険して過ごすという夢」を果たせるだけの富を手に入れたジムは、恋人ペイジとともに、特注の黄色いベンツで世界中を冒険する旅に出る。

「ウォール・ストリートの投資家」と「冒険家」という2つのキーワードは、一見あまりにもかけ離れていて、にわかにはその内容を想像し難いが、実際に本を読んで見ると、冒険記として十分に楽しめる内容となっている。これは、ジムが生来持つ冒険心や、政治家から大物マフィアまで広がる人脈のおかげなど、普通の旅行では決して見ることのできない、「裏」の世界を含めたその国の真実の姿が描き出されているからだ。

そこには、毎日あくせくと同じパターンの生活を繰り返す人には全くうかがい知れないほど、はるかに血生臭い世界でたくましく、(もしかしたら)我々よりも遥かに人間らしく生きる人々の姿が写し出されている。

ジムが我々と同じビジネスマンの視点でこのような世界を語っているところに、共感を抱くことができる。また、こういう大きな世界から自分のポジションを見つめ直すことで、日ごろ自分がクヨクヨ悩んでいることがいかにちっぽけなことであるかを思い知らせてくれる。まるで、海外旅行で見たこともないような雄大な景色を見た時に味わう感激……。そんな感覚に似ているのではないだろうか。

この本のもう1つの面白さは、世界の国々を見つめる際に、投資家としての視点が随所に盛り込まれている点だ。その中でジムは日本の閉鎖性やひどい人種差別を批判しながらも、「日本株は割安で買い」という。なぜジムが「伝説の投資家」と尊敬されるようになったのか。その投資戦略の真髄を学ぶことができるだろう。

また、恋人ペイジとの関係も興味深い。2人は旅の途中で結婚することになるのだが、2人のやりとりからは、投資家としてのジムにはない、優れた人間性をうかがうことができる。「異文化と触れ合う旅を通して自己成長を図る」。ジムが成功者と言われるのは、こうした側面が影響しているのかもしれない。

MBA理論を物語タッチで分かりやすく解説

「成功に向かう道には、いくつもの地雷が埋まっている」と著者の神田昌典氏は言う。神田氏は、ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)など輝かしい学歴を持つ人物だ。現在は、心理カウンセリグなど複数の会社を経営しており、カリスマコンサルタントとして成功を収めた起業家である。

本書は、起業してから5年間のうちに多くの起業家が経験することを物語タッチにまとめたもの。物語は、主人公「タク」が、勤めていた会社をリストラされてから、会社を起業し、成功させるまでを描く。しかし、単なる成功物語ではなく、子供の病気、妻との離婚危機、社員の精神病など、「成功が現実のものとなるのに応じて、それと等価の困難や障害」に主人公は出会うことになる。

こうした困難や障害は決して偶然のものではなく、起業して成功した者の多くが経験することだという。神田氏がコンサルティングの仕事を通して出会った話だ。「成功すると困難も増える」という著者の指摘には、「人の幸福とは何か?」ということを考えさせられる。単にビジネスとして会社を成功させるだけでは、人は幸せにはなれないということだろうか……。

また、MBAホルダーによって書かれた本書は、経営学の本としての機能も持つ。「新規参入するなら成長期で」「第2創業期の壁」など、役に立つ知識が至るところにちりばめられている。

しかも、こうした知識は、著者の実践に基づいているので、時としてMBAの教科書を超える“気付き”がある。例えば、MBAの理論では、競争が激しく利益を上げにくい成長期での新規参入を必ずしも薦めない。しかし、本書に登場する経営者は、利益率の大きい成長期前半での新規参入を説いており、なるほどと思わせる。物語タッチで楽しみながら、経営の勉強もできてしまう、オススメの1冊である。

「二者択一」ではなく仕事と私生活双方を追求する

キャリアアップと
プライベートライフ

シュプリンガー・フェアラーク東京
D・クィン・ミルズ、S・K・マットゥ、K・R・ホーンビー
田村勝省(翻訳)

キャリアアップのために、ある程度のハードワークが必要だということは、誰も否定しないだろう。その一方で、ハードワーカーによく起こりがちな問題が、プライベートライフとの両立だ。世間を見渡すと、素晴らしいキャリアを持ち、高い年収を得ているものの、激務のせいで家庭が崩壊している人や、あるいは家庭を持つこと、すなわち結婚そのものを先送りしている人は決して少なくない。

私の周りにも、仕事のやり過ぎで家庭を顧みなかったことが原因で離婚し、「子供の顔が見たい」と毎日のように愚痴っていた上司がいた。このような事態になる前に、是非とも読んでおきたい1冊である。

本書によると、このような現象は、「二者択一法思考(これかあれかのいずれかは手に入れることができるが、両方は無理という考え方)」に起因するという。しかし、真のバランスは、キャリアとプライベートライフを同時に追求することによって実現できる。

そのためのやり方を提供してくれるのが本書だ。「さほど欲しいと思わないものはあらかじめあきらめておく」「家族と会話する時間が少ないと、かえって仕事に集中できなくなる」「自分独自のニッチなスキルを身に付け、職場で優位に立つことができれば、『明日にします』と上司に言える」など、目からウロコのアドバイスがたくさん盛り込まれている。

特に、普段自分を追い込んで仕事をしているような人は、本書を読んで気付かされることは多いはずだ。仕事で成功して社会的地位やお金などを手に入れても、私生活がすさんでいる人は、意外と多いものだ。仕事とプライベートとの両立は、自ら“意識”しなければ実現できないことを教えてくれる。

<選者のプロフィル>
五十嵐徹夫氏(仮名・38歳)

現在、ITベンチャーで役員を務める。30代後半で欧州の有名大学のMBAを取得。休日はミステリーや哲学書、ビジネス書まで幅広く読みあさる。月平均の書籍購入代は3~4万円。話題のビジネス書は、ほぼ目を通す。自ら「ビジネス書オタク」と公言している。

Yahoo!ブックマークに登録 この記事をdel.icio.usに追加

1 2

キーワードから記事を探す

キャリアを、スキルを、年収をアップさせたい!「キャリアアップ」「スキルアップ」「ライフアップ」をキーワードに、3年後のキャリアから10年後の生活設計までサポート! どこから読んでも夢の入り口、憧れのキャリアをつかめ!