06/03/29更新

プロスポーツの世界では、一度決裂した年俸交渉が、2回目に「1000万円以上も上乗せ」などという話がよく報じられる。一体どのような交渉が行われているのか。その答えは、ビジネスマンの給与交渉にも応用できるはずだ。そこで、ヤクルトの古田敦也選手兼監督やガンバ大阪の宮本恒靖選手の代理人として有名な日本初のプロスポーツ選手エージェント・辻口信良弁護士にその極意を聞いた。

日本と欧米で異なる「スポーツ」に対する考え方

打率、打点、本塁打数……成績が数字で明確に表われてしまうだけに、プロ野球選手の年俸査定はシビアです。しかし、そこにまったく交渉の余地がないというわけではありません。ただ、最初に説明しておきたいのは、代理人に対する日本と欧米の考え方の違いです。欧米のスポーツ選手の年俸交渉は、専任のエージェントや弁護士がつきものですが、日本は随分事情が違いますね。

特に日本のプロ野球界では、選手が「代理人を雇う」と言っただけで大騒ぎになります。「契約社会」という意味では、(ビジネスの世界もそうかもしれませんが)日本のスポーツ界は非常に遅れています。代理人を立てることで非難されるなんて、欧米ではありえない話ですから。

その背景には、スポーツに対する考え方の違いがあると思います。スポーツの語源はラテン語のデポルテとかデポルターレで、これは「楽しむ」とか「遊ぶ」という意味なのです。日本の場合、スポーツというと、闘う道具としての武術とか剣道は昔からありましたが、野球だとかサッカーだとか団体で「遊ぶ」という意味でのスポーツはありませんでした。

ベースボールやサッカーなどのスポーツが、明治時代に欧米から入ってきた時に、スポーツの語源通りに「遊び」の方向に行けばよかったんですが、日本の場合、富国強兵策の手段として、「体育」という学校教育の中に組み入れてしまったのです。知育・徳育・体育という教育の一環に組み入れた結果、スポーツが体育化したといえます。

年俸交渉でモメると“銭闘”開始とタタかれる

一昨年の球団合併問題での縦横無尽な働きは未だ記憶に新しい。古田敦也選手兼監督は、ビジネスマンからの注目度も高い

スポーツを教育の問題にしてしまったことで、それにお金の話を絡ませるのははばかれるようになった。そこで、スポーツとお金の親和性が弱くなってしまったんだと僕は思っています。

スポーツ選手がお金のことを言うと「汚い奴だ」なんていう批判が出てくるのはその象徴です。プロだったら年俸を意識するのは当たり前なのに、年俸交渉でモメると、スポーツ紙に“銭闘”なんて書かれたりしてね。

最近はサラリーマンにだって年俸交渉の機会があって、自分の意見を主張できるようになっているのに、身分保障の点などでサラリーマンよりはるかにリスクの高いプロスポーツ選手がお金のことを言っちゃいけないなんてどう考えてもおかしい。年俸交渉を進めていく際には、こういう日本独特の事情を前提にする必要があるんです。それはビジネスの世界でも同じではないでしょうか。

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