05/11/17更新

「テレビは1人でも成立する」……。次々と斬新な切り口で業界の話題をさらうおちまさと氏。その活躍の場はテレビの枠を越え、前回取り上げた『ダットエムオー』のような商品プロデュース、アパレルデザイン、CM監督など多岐に渡る。さまざまな分野で冴え渡るおち氏の企画力を支えているのが、ユニークなアイデア創りの方法だ。では、そのアイデアを企画として昇華させるには、どのようなテクニックが必要なのか。おち流“売れる企画”の創り方から、企画立案の真髄を学べ!

「ポジティブ・プランニング」と
「ネガティブ・シミュレーション」

「この企画はイケる」という感覚を持ったことは、今まで一度もないですね。別に謙虚な気持ちではないですよ。本気で「まだまだイケてない」と思っているのです。内野安打で何とか一塁を駆け抜けたくらいのレベルではあるかもしれませんが、クリーンヒットやホームランは打ったことがない。ただね、確かに頂上までの道のりはまだまだ長いけど、必ずできると思っています。この点に関してはすごくポジティブ。僕の中で、「できない」というイメージを持つことはありません。

企画を立てる時も同じ。何か企画を思いついたとき、「これはトンデモなく面白いぞ!」とすごくポジティブに考える。これを自分では「ポジティブ・プランニング」と呼んでいます。でも、プランニングした後は、「ネガティブ・シミュレーション」に入る。いかにこのプロジェクトはダメか、ここがダメ、あそこがダメというように、思いつく限りネガティブな要素を探していく。何とか抜け道を見つけても、また新たな障壁を考える。この壁を全部乗り越えなければ、その企画はモノになりません。それだけ売れる企画を考えることは難しい作業なのです。

たまに、「ポジティブ・プランニング」と「ネガティブ・シミュレーション」が逆になっている人がいる。プランニングの段階で、「この企画ダメかも……」とネガティブ・プランニングをしているのに、いきなり「いいから、やっちゃえやっちゃえ!」みたいなノリで話を進める。これは絶対企画が失敗するパターンです。他で考えられるのは、企画を出せと言われたから仕方なく出したけど、ゴーサインが出てしまって、「よーし、通ったからいいや、さあ進めようか!」と急にポジティブになるパターンとかね。

こういうプランニングは笑い話にはなっても、うまくいくはずがない。新しい仕事を始める時にはワクワク、そして実際の仕事に入ったらネガティブです。徹底的にネガティブにシミュレーションしなきゃ。ここを勘違いして、「仕事は常にポジティブでなければいけない」と思っている人が、あまりにも多すぎる。企画はポジティブとネガティブを行ったり来たりのシーソーゲームなんです。

企画立案の基本は
「右向け左」にある

僕の場合、そのシーソーゲームの向こうには、「既成概念をぶっ壊す!」という目的がある。究極的にはこれしかない。既成概念といっても、ぶっ壊していけば「常識から非常識に変わる」のです。でも、非常識を2年も続ければ常識に変わる。そして、皆がマネし始める。そうしたら、また逆を向いていけばいい話。常に「右向け左」という言葉が僕の中にはある。皆が右を向いていたら左を向かなければ、いい企画は生まれない。そうでなければ、何も僕じゃなくても別の人で代用できちゃうわけですから。

だから、僕は「この企画は誰がやってもダメでしょ、実現不可能だよね」と言われると燃える。「よし、やった!」と思うんです。だって、それって誰もやったことがないということでしょう。大部分の人はみんながやってから後追いする。でも、それではもう全然遅いということがわかってないんですよね。

よく、「なんでそんなにアイデアが浮かぶの?」って聞かれるけど、企画は記憶の複合に過ぎない。ある記憶と別の記憶をくっつけるわけですよ。すると、ある日突然2つ以上の記憶がくっついて企画が生まれる。1つだったらそれは企画ではない。企画というのは一石二鳥以上、要は“一石多鳥”なのです。

企画を出せと言われ、部屋をきれいにして風呂にでも入る。机に向かって、さあ企画を出すぞと意気込んだからといって、企画が出てくるはずがない。企画は“生理現象”ですから。便秘を例に考えてみましょうか。便秘の人って、ゆっくり体を休める時間があっても出ない日は出ない。でも、変な時にいきなりしたくなるじゃないですか。電車に乗っている時とか、本屋で立ち読みしている時とか。

企画って、それと一緒なんです。出そうと思っても出ないけど、変な時に思いつくんです。2つ以上の記憶がガチャガチャとくっつく……。1年前に思ったことと3年前に思ったこと、おととい思ったことと今日思ったことが一気にくっつく瞬間に、企画が誕生するのです。

人気番組『自分電視台』も
記憶の複合から生まれた

企画プロデュースの仕事についていえば、クライアントは矛盾したことを言ってくることが多い。「低予算でとにかく面白いモノを考えてください」と。これは矛盾していますよね。予算をかけずに、ウケるモノを考えろって。この矛盾を補うのは真ん中にある企画しかない。時には安ければ安いほど企画が面白くなっていく、こんな奇跡みたいなケースもあるんですよ。

そのためには、いろいろな記憶をくっつけなくてはならない。例えば、タレントさんにデジタルビデオカメラを渡して、自分自身を好き勝手に撮ってもらい、それをノーカットで放送する『自分電視台』という番組があった。深夜番組のワリには、とても視聴率が良かったんだけど、これは3~4年に渡る記憶の断片がくっついて生まれたものです。

ある時期、僕の中で“セルフ”とか“自分”という言葉がすごく気になっていた。そのとき、「セルフプロデュース」「自分プロデュース」を番組のテーマにできないかなと。「でもなかなか難しいよな」ってことで、その話は流しました。

またある時は、「テレビって何時間も撮影したものを20分とか30分に編集して放送するけど、このやり方って何とかならないかな……」と頭を悩ませていた。また別の時には、テレビを見ていたら番組のエンドロールが流れて、「やたら長いな、このエンドロール」と感じた。

そしてある日、スポーツ雑誌で、江夏豊さんが完全試合を達成したときの記事を読んだ。その試合では、自分でホームランを打ち、1対0で勝ったという。ヒーローインタビューでの名言が「野球は1人でもできる」。

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